「日本拳法」に、ろう者として初めて入門。
耳が不自由な困難を乗り越えて、公式戦で歴史的初勝利を収める

体育会拳法部 現代心理学部映像身体学科2年次 高橋 豪さん

2025/02/04

アスリート&スポーツ

OVERVIEW

90年以上の歴史を持つ日本拳法※に、ろう者として初めて入門した高橋豪さん。「3歳から高校まで野球一筋だったのですが、イップス症状が出たことから大学では格闘技をやろうと決めました。日本拳法には、打撃も組み技も寝技もあり、自由で戦略性の高い点が魅力です」と話す。

※日本拳法:1932年創始。防具(面・胴・股当など)とグローブを着用し、打撃技や投げ技、寝技、関節技を駆使して勝敗を競い合う総合格闘技。

「日本拳法第37回東日本大学リーグ戦」で高橋さん(手前)の蹴り技が決まった場面

高橋さんは補聴器を付けても言葉を鮮明に聞き取ることが難しいため、独自の工夫を凝らしている。

「試合においては味方のアドバイスや声援、判定時の笛の音も聞こえません。反則行為を起こさないように、常に対戦相手と審判を視野に入れ、何かあればすぐに審判の目を見て確認することを心掛けています」

高橋さんの公式戦出場は、2年次5月の「日本拳法第37回東日本大学リーグ戦」が初めて。「1年次は聴覚しょうがいを理由に日本拳法連盟から出場許可が下りなかったため、自分の実力を知らないまま試合に出ることになり不安でした」と振り返る。7人制の団体戦で、立教大学は敗戦したものの、副将を務めた高橋さん個人は2戦2勝。ろう者として日本拳法で史上初となる勝利を収めた。

「1年間ずっと試合に出たい気持ちをこらえて積み重ねた練習は裏切りません。日本拳法の名門校の選手に対し、1本も取られずに完封勝ちができたことは大きな自信になりました。この結果は、私と同じろう者の方にも勇気を届けられたのではないかと思います」

高校時代の映画制作をきっかけに、現代心理学部映像身体学科に進学した高橋さん。「『映像身体学』という科目では、視覚だけでなく聴覚も遠近法を用いる事実に驚きました。聴覚しょうがいのない方がどのように音を聞き分けているのか長年疑問だったので、非常に興味深かったです」と日々の学びから刺激を受けている。文武両道に励む中で、今後の目標についてこう話す。

「これからも学問にまい進するとともに、拳法部では黒帯の取得とリーグでの団体戦初勝利、そして個人戦大会優勝を目指して努力し続けたいと考えています」

拳法部の練習風景。他大学との交流が盛んで、合同合宿や個人での出稽古も行っている

高校(東京都立中央ろう学校)の後輩で、東洋大学の拳法部に所属する北村友樹さんと(右が高橋さん)。高橋さんがろう者の日本拳法家として道を切り開いたことで、北村さんは1年から公式戦に出場できた

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