アジア各国の学生と共創する「ACEプログラム」
第1期生 成果報告会レポート

国際化推進機構

2024/04/10

RIKKYO GLOBAL

OVERVIEW

立教大学の国際化戦略の一環として2021年度からスタートした「ACEプログラム※」。ソウル大学校、北京大学、シンガポール国立大学の3大学と連携し、リベラルアーツ教育を基礎としつつ、現代のアジアや国際社会の諸課題について思考し、行動できる人材を育成することを目的としています。同プログラムでは、提携大学への長期交換留学やオンライン留学、短期インテンシブプログラム、参加者同士の国際文化交流などを柱としています。2024年2月3日、約2年間におよぶプログラムを修了した第1期生による成果報告会を池袋キャンパスで実施しました。その内容をご紹介します。

※ACEプログラム:「リベラルアーツ教育」を共同テーマとした大学間国際コンソーシアム「The Asian Consortium for Excellence in Liberal Arts and Interdisciplinary Education(The ACE)」の中核を担うプログラムの総称。2021年度文部科学省「大学の世界展開力強化事業~アジア高等教育共同体形成促進」に採択。
成果報告会には、西原廉太総長、松井秀征副総長(国際化推進担当)、参加学部の教員、2024年度秋学期から長期交換留学に参加予定の第3期生、現在立教大学で学んでいる留学生、事務局スタッフなどが参加し、第1期生6人の発表に耳を傾けました。まず開催にあたって西原総長からあいさつがありました。

「皆さんはACEプログラムのパイオニアとして約2年におよぶプログラムを見事に完遂されました。教職員としても全てが初めての連続で、コロナ禍にも見舞われました。皆さんも予想だにしない出来事や不安、悩みに遭遇したことと思います。そのような状況を見事に乗り越え、本日の報告会を迎えられたことを総長として頼もしく、嬉しく思っています」

続いて第1期生6人の成果報告があり、それぞれの発表後、教員からの講評が行われました。

第1期生からの報告

報告は主に5項目について行われました。①ACEプログラムへの参加理由や魅力、学修・学生交流の総括 ②自分が考えるリベラルアーツ ③6つのコアスキルに関する「ACE Common Rubric※」を用いた自己評価 ④これからのキャリア目標 ⑤その他、特筆したいこと。

※ACE Common Rubric:ACEプログラムが設定する、Cではじまる6つのコアスキル(Critical thinking, Collaboration, Communication, Consilience, Challenge, Cosmopolitan)に基づく評価指標。

佐藤 優佳 経営学部国際経営学科4年次

高校時代には海外留学などを通して、英語力を伸ばすことに力を入れてきました。大学では「英語を学ぶ」のではなく「英語で学びたい」と思い、経営学部国際経営学科に進学。ACEプログラムに参加したのは、英語圏以外の大学で、学部の枠を超えて学べる点に魅力を感じたからです。

長期交換留学先では経営学のほか、人類学、社会学、環境学、美術など幅広い分野を学びました。シンガポール国立大学ではジェンダーやサステナビリティの科目を履修。経営学とは異なる分野のため「分からない、ついていけない」と授業の度に思っていたのですが、周囲の学生を見ると、物理学専攻の学生がジェンダーの授業で積極的に発言していたり、文学部の学生が環境について詳しい知識を持っていたり……。自分の専門外でも幅広い知識を持っている学生の中で学ぶのはとても新鮮な経験でした。
私はACEプログラムを通じて、リベラルアーツとは「どのような環境にも適応できる力」だと考えるようになりました。さまざまな分野を学ぶことで世の中を広く知ることができる。そして会話できる相手がどんどん増えていく。少しでも相手との共通点があれば、新しいものを受け入れ、理解する力も育まれるのではないかと感じています。

ACE Common Rubricの自己評価として、特に「Cosmopolitan」では「人と違うことは面白い」と感じるようになりました。そのような考えを持っていると、特に社会問題に対する意見が人と違った時に、お互いに意見を言いやすく、一緒に解決策を考えようという空気が生まれると思います。

卒業後はエネルギー分野の会社で働く予定です。高校時代は新しいことに挑戦する中で成長するのが楽しく、ACEプログラムでは特定の分野を究めるのではなく幅広く学ぶことができました。そうした経験や、好奇心、教養を生かし、次はエネルギー分野を極めて「第一人者」になりたいと思っています。

柿原 亜紗子 GLAP4年次

ACEプログラムへの参加を決めた理由は三つあります。一つ目は少人数のコミュニティであるGLAPの枠を越えて留学したいと思ったから。二つ目は英語をベースとしたアジア圏の大学への留学に魅力を感じたから。そして三つ目は自分の生まれ故郷であるシンガポールで教育を受けてみたいと考えたからです。

シンガポール国立大学で印象的だったのが、科目がレクチャー(毎週行われる講義)とチュートリアル(隔週で行われる少人数での学び)で構成されていたことです。レクチャーでは資料のリーディングを通してインプットを行い、チュートリアルではディスカッションやグループワークでアウトプットする。このプロセスによって、より深く学ぶことができたと思います。授業以外でも現地で知り合った友人と今でも連絡を取り合って日本語を教えるなど、文化交流をすることができています。

リベラルアーツとは、幅広い分野にわたる総括的かつ柔軟な教育だと私は考えています。リベラルアーツ教育によって国際的な視野が広がり、多文化理解が進むと感じました。

ACE Common Rubricの自己評価では、特に「Consilience」で成長を実感しました。ACEプログラムでの留学経験を立教での卒業論文につなげ、自分の専攻分野で新たなリサーチを進めることができたからです。

将来的には人事職でキャリアを築いていきたいと考えています。私が興味を持っているのは、職場環境の向上と効率化、組織文化の促進と職場内のエンゲージメントを高めることです。ACEプログラムで身に付けた対人スキルや柔軟性、問題解決力、異文化理解力を今後のキャリアに生かしていきたいです。

平山 理乃 異文化コミュニケーション学部異文化コミュニケーション学科4年次

ACEプログラムの中で特に印象に残っているのが、ソウル大学校でのアウトプットベースの講義です。事前に資料が配られ、自分の意見を準備して授業で発言する機会が多くありました。最初は自分の考えを言語化して、発表するのが難しかったのですが、徐々にコツをつかみ、言語化のプロセスが確立されていったと思います。

新たな分野を学ぶ機会を得られたことも、ACEプログラムに参加して良かったことの一つです。特に韓国語と地政学は、これまで触れたことのない分野だったので、とても貴重な機会になりました。

現地の学生や他国の留学生たちと話をする中で、彼らが幅広い知識を持ち、洞察力に富んだ発言が多いことに感心しました。「どうすればこの力を手に入れられるんだろう」と考えた時に二つの課題が見つかったのです。一つ目が、自分の専門分野以外の知識を持つこと。そうすることで多面的なものの見方ができるようになると感じました。二つ目が、何事にも疑問を持つこと。講義中のディスカッションでも、プライベートな対話の中でも、疑問を持つことで、より深い理解につながると気付きました。

ACE Common Rubricの自己評価では、特に「Cosmopolitan」の観点で成長を実感しました。異国の地に身を置く中で、国に対する偏見や固定観念に対して客観的に向き合う態度が身についたと感じています。

今後の目標ですが、一つ目は複合的な知識を持ち、どのような場面にも対応できる力を持った人になりたいと考えています。二つ目は世界でキャリアを積んで、ACEプログラムで出会った仲間とまたどこかで再会したいです。簡単ではないと思いますが、この目標を原動力として頑張っていきたいです。

私の大学生活はコロナ禍と同時に始まり、決して充実したものとは言えませんでした。しかしACEプログラムに参加したことで、それを取り戻すかのように大学生活の中で最も濃い経験ができたと思います。参加させていただいたことに大変感謝しています。

十合 萌奈美 経営学部国際経営学科4年次

ACEプログラムではアジアトップクラスの大学に留学するということで、良い緊張感がありました。「この人たちがアジア、世界をリードしていくんだな」と思わせてくれる素晴らしい学生たちにも出会うことができました。

私は、ACEプログラムに参加する前は「リベラルアーツって何をするのかな?」という印象を持っていました。今ではリベラルアーツは「自分の生きる世界が自動的に広がるもの」と考えています。人は何事も経験してみないと分からないので、いろいろな学問に触れてから自分の適性を図ることができる優れたシステムだと感じます。

続いてACE Common Rubricの自己評価です。「Collaboration」について、経営学部ではグループワークが多く、私は率先して指揮をとって進めていくタイプでした。しかし留学先では私より主張が上手い学生が多く、圧倒されて受身になることが多かったのです。環境や協働する相手によって自分の発揮される能力や、性格も変わるんだということに気付かせてくれた意義のある経験だったと思います。「Consilience」については、もともと経営学に固執していたのですが、リベラルアーツを通して他分野に挑戦する楽しさを感じることができました。最近では好きになった哲学の本をよく読んでいます。

今後のキャリアとして、欧米だけでなくアジアにも関連した仕事に携わりたいと思っています。ACEプログラムを通してアジアのパワー、成長力、底力を感じました。また「自分も1人のアジア人なんだ」というアイデンティティを感じたことで、近隣諸国との関係の重要性に気付きました。

卒業後は立教大学大学院の経営学研究科国際経営学専攻で学ぶ予定です。大学院在学中に、提携校であるフランスの大学院とのダブルディグリープログラムに挑戦したいと考えています。次は欧州で、より広い視野を得られるよう励みます。

ソン・ウヒョク GLAP4年次

ACEプログラムでは最初に北京大学でオンライン授業を受けました。立教大学の卒業論文の時期と重なって大変でしたが、2つの大学の授業を同時期に受け、比べることができたのは貴重な経験になりました。受講したのは、私の専門分野であるビジネスに関連した科目です。その中で驚いたのが「なぜ中国は世界一になれないか」という話を2人の先生がされていたことです。日本や韓国の授業ではあまり聞いたことがない話題だったので、両国と中国が置かれている立場の違いを実感しました。

シンガポール国立大学では、今までの自分の価値観とは異なる学びを得ました。ビジネスには効率が大事だと学んでいましたが、シンガポールは多民族が共に暮す社会であり、住む場所や働く場所において効率よりも多様性を重視するという国の方針があるのです。
長期留学中には合計12のサークルや部活に参加しました。朝は授業、夜はサークル活動という毎日でしたが、現地の学生との交流を通して、現地ならではの話を聞くことができたのは貴重な経験でした。また自由時間にはソウルとシンガポール以外の6カ国・11都市に足を運び、東南アジアをより理解することができたと思います。

次にACE Common Rubricの自己評価です。「Collaboration」の観点では、特にソウル大学校でグループワークの進め方が立教と異なり、1人が調査、1人が資料作成、1人が発表というように分業体制が敷かれていました。そこで私は「立教では皆で協力して調査して、皆で資料を作ったよ」といった話をして、自ら働きかけて進めることができました。

今後のキャリア目標は二つの道を考えています。一つは外資系企業に就職し、ACEプログラムで学んだ多文化共生の経験を生かすこと。もう一つは国際機関への就職です。例えばシンガポールと日本で国際的な問題が起こった時、両国の文化を知っている私にできることがあるのではないかと思っています。

宋 多彬 異文化コミュニケーション学部異文化コミュニケーション学科4年次

ACEプログラムを通して、ソウル大学校での2学期間の長期留学とウインターインテンシブプログラム、北京大学でのサマーインテンシブプログラムを経験しました。1学期目に私がよくできたと思うのは、期待よりも高い学業成績を収められたことです。授業についていけるか心配だったので、立教で学んでいる時の3倍の時間を予習と復習にかけたことが、こうした結果につながったと思います。

ただ1学期目の途中で、友人が同じ授業を取っている人しかいないことに気付きました。ACEプログラムの目的の1つである「リベラルアーツの視点を得るための交流」ができてないと感じ、2学期目は現地生のサークルをはじめ多様なコミュニティに参加しました。

ACE Common Rubricの自己評価では、特に「Communication」の観点で、他者との違いを生かす力を身に付けられたと思います。例えば、課題解決型プレゼンテーションで、生命科学部や医学部の学生と5人チームでグループワークを行った時のことです。それぞれ専門分野が異なり、着眼点が違うので意見が衝突することがありましたが、その違いを生かし、多様な視点からアプローチした発表ができました。

私の考えるリベラルアーツとは、自分の無知さを気付かせてくれるもの。また、学問の掛け合わせによって、1つのものが2つになったり5つにもなったりすること。そして、解決策が見つからない時に頼れるヒントになってくれるものではないかと考えます。今後の目標として、物事の本質を見極めることから、新しい発想を生み出すことにおいてまで、今回の経験で得た学際的な学びを生かしていきたいと思っています。

最後に後輩学生へのメッセージですが、私が1年次の時に授業で聞いた言葉がACEプログラムにもぴったりだと思ったので紹介します。「みんな良い経験をしたいと思っているけれど、良質な経験というのは人数分用意されていない。だからこそ、どんどん挑戦して自分から掴みにいこう」というものです。留学の経験を存分に自分のものにするためにも、この言葉を覚えておいていただければと思います。

修了証の授与

全員の報告に続いて、第1期生6人が共同制作したACEプログラムの動画を上映。そして、松井副総長から修了証の授与と閉会のあいさつがありました。

「皆さん、本当にお疲れ様でした。今日の発表と最後の動画を拝見して、『立派にやり遂げたな』と感じました。私の中で印象に残りつつも申し訳ないと思っているのが、やはりコロナ禍があって、皆さんが想定していた通りには進められなかったことです。しかし、全員がプログラムを成し遂げてくれました。報告を聞いて気付いた共通性『他の学生の知識に圧倒された』『自分自身、何をしなければいけないかを感じる機会になった』といった内容を今回共有できたのは、非常に意義のあることだと感じました。最終的にこのプログラムの成否は、皆さんがこれから社会に出て活躍してくれるか、に懸かっています。今後もぜひこの学びを活かしていってほしいと期待しています」

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